自然環境調査における携帯電話の活用:位置情報の記録

経緯度による記録の問題点


 経緯度による場所の記録は,地名などに比べて正確に地点を示すことができ,コンピュータ処理もしやすいなどの利点がたくさんあります.ところが,下記の2点により適切な利用方法をとらないと正確な位置を表せないなどの問題点もあります.

測地系の違いによる問題点

 測地系というのは一般のかたにはむずかしいのでgoogleなどで検索していただくとして,日本で使われる測地系は,旧日本測地系(Tokyo Datum,以下日本測地系と記す)と改正測量法の施行に伴って決められた新しい規格である日本測地系2000(JGD2000,以下世界測地系と記す)の2つがあります.この2種類の測地系で同じ地点の経緯度を表すと違った値になります.
 たとえば徳島県立博物館の位置は下記のようになります.
   世界測地系 北緯34度2分24秒 東経134度31分35秒
   日本測地系 北緯34度2分12秒 東経134度31分45秒
これを間違えるとどのくらいの違いになるのでしょうか?下の図のが世界測地系で県立博物館の位置を示したものですが,間違って日本測地系の緯度経度でプロットするとの位置になります.結構離れた位置にプロットが打たれていることがわかります.青いは博物館の裏山にありますので,博物館を見ることができない場所になりますので,このような間違いをしたら博物館にはたどり着けなくなってしまいます.

測地系の違いによる間違いを防ぐために経緯度の標記の後に "WGS84" (世界測地系の場合)など用いた測地系を記入する場合があります.後々のことを考えるとそのような配慮が必要なのでしょう.

【測地系の変換】
異なった測地系を使っていても,相互に変換は可能です.測地系の変換は陸地は国土地理院,海上は海上保安庁と管轄が分かれており,ホームページや変換専用ソフトで変換することができます.国土地理院などの変換ツールは場所ごとに変換誤差のパラメータを使って変換していますので,自然環境調査で用いるのには十分な精度で変換できますが,簡易な変換方法を用いている場合もありそこで誤差が発生しますので注意が必要です.

経緯度を表記する場合の問題点

 経緯度を記録する場合は度・分・秒で決まっていると思ったらそれが落とし穴です.使う用途によってさまざまな表記が用いられています.

 たとえば,徳島県立博物館の位置は世界測地系で北緯34度2分24秒,東経134度31分35秒となっています.これは度+分(60進法)+秒(60進法)の方法で表記されています.これを度(degree)のd,分(minute)のm,秒(second )のsを使ってdd.mm.ssと表記したりします.
 北緯34度2分24秒,東経134度31分35秒は下記のようになります.

度・分(60進法)・秒(60進法) dd.mm.ss 北緯: 34.2.24
東経: 134.31.35
度(10進法) dd.dddd 北緯: 34.0400
東経: 134.5264

 他にもたくさんの表記方法がありますが,これをきちんと処理しないと正確なデータ処理になりません.携帯電話のメーカのひとつであるAUの場合は,パラメータで表記方法を変えることのできる仕組みになっています.


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